都市部企業の社員が自然豊かな地方で働くことの意義を科学的に考える

都市部企業の社員が自然豊かな地方で働くことの意義を科学的に考える

Forbes が発表した2017年の10 Workplace Trends(企業人事や組織開発関連で起こることが予想される10個のトレンド)のひとつとして『Workplace wellness, and well-being, become critical employee benefits for attracting top talent (トップクラスの人材を獲得、確保するために、企業が社員の健康や幸福感に関与していくことが極めて重要になる)』ことが挙げられている。(引用元:forbes 「10 Workplace Trends You'll See In 2017」

日本でも生産年齢人口の減少が進むなか、知識集約型産業を中心に優秀な(トップクラスの)人材の獲得と確保は企業の業績や企業価値を大きく左右するものとなり得るため、多くの企業が社員の健康や幸福感に対しての投資をせざるを得ない状況となることが予測される。

このような潮流を見据え、地域の自然が都市部の企業の社員の健康や幸福感にポジティブな影響を与えられることを”簡易脳波測定機”という一風変わったテクノロジーを活用して科学的に実証し、企業からの誘客をねらう地方自治体がある。ナウマン象の化石が発掘されたことで有名な野尻湖や黒姫高原を有する自然豊かな長野県信濃町である。

なぜ、信濃町は地域の自然が都市部の企業の社員の健康や幸福感にポジティブな影響を与えられると確信を持つようになったのか?脳波を測定することで何を見出そうとしているのか? どのような戦略をもって都市部の企業を惹きつけようとしているのか? を紹介していきたい。

なぜ、信濃町は地域の自然が都市部の企業の社員の健康や幸福感にポジティブな影響を与えられると確信を持つようになったのか?

信濃町は地域の豊かな森の癒し効果に着目し癒しの森事業を展開してきた地域で、「森林セラピー」の先進地として知られている。
森林セラピーとは、しなの町Woods-Life CommunityのHPによると次のようなものである。

「森林浴」の効果を科学的に解明し、こころと身体の健康に活かそうという試みです。この研究のために産・官・学が連携し発足した「森林セラピー研究会」では、「癒し」効果の高い森の調査や、森林の活用方法の研究などを進めています。そして、研究会の実験により「癒し」効果が確認された全国24か所の森が「森林セラピー基地」「森林セラピーロード」に認定され、安心して森林浴を楽しめる森として活用されるなど、「森林セラピー」の活動は徐々に浸透し、広がりをみせています。

このように信濃町の森林セラピーは科学的に効果が実証されていることがポイントとなる。例えば、森林セラピーを体験するとストレスの高い時に高まる「交感神経活動」が抑制され、リラックスした時に高まる「副交感神経活動」が昂進するということなどがわかってきており、企業のメンタルヘルスの一次予防としても活用がされている。また、信濃町の地域の自然やサービスを活用した新入社員研修を継続的に実施している企業では、若手社員の退職率が下がってきたということも確認されている。

一方で、前者に関しては都会での仕事に戻った後にも森林セラピーの効果を持続させるためにはどうにしたらよいか?後者に関しては退職率以外の指標でも効果をみることはできないか?といった声も聞かれるようになってきていた。

そんな折、2015年よりモデル等の実証がはじまったふるさとテレワークの動きなどもあり、信濃町のような地方で働くこと(必ずしも都会に戻らずに働けること)も選択肢として考えやすくなってきたこと、また、ビッグデータ解析や人工知能(AI)などのテクノロジーを活用して採用、人材育成、業績評価、タレントマネジメントに活用するHR Techの進展もするなか、退職率以外の指標でも効果をみやすくなってきていることに大きなチャンスを感じはじめた。

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