脳波を測定することで何を見出そうとしているのか?

脳波を測定することで何を見出そうとしているのか?

5年前には一部の分野の人の間でしか使われていなかった「マインドフルネス」という言葉であるが、最近では新聞や雑誌などでも頻繁に取り上げられるようになってきた。
もともとは、仏教の考え方に由来したものを宗教的なものを取り除いても、”科学的”に効果があるとマサチューセッツ大学マインドフルネスセンターを創設したジョン・カバット・ジン氏が医療と社会の現場に導入していったのがマインドフルネスの普及のはじまりと言われており、「自然を体験する良さ」も科学的に証明していけば自然の価値が再認識され、自然の中に足を運ぶ人や自然の近くで働きたい人も増えてくるであろうと考えているのが信濃町がパートナーを組んだNPO法人Nature Serviceである。

では、なぜ、自然の良さを証明するのに「脳波」に着目したのか? 理由は大きく2つある。

・脳に対する高い関心

冷静に考えると不思議な話であるが、日本人は「脳」という言葉に引き寄せられる傾向があるのか、書店などを見渡すと医学、心理学、ビジネス書、教育関連の本など、幅広い分野の書籍のタイトルに「脳」という言葉が使われている。そんな脳の本を数千冊にわたり分析した森健氏(「脳にいい本だけを読みなさい!-「脳の本」数千冊の結論 (Kobunsha 」)は以下のように述べている。

現在の脳科学は、実は「相関」だけで研究されているのです。だとえば、時間相関をとって、何か行動なり何なりにともなってニューロンが活動していたから、それに関係するニューロンだ、と考えます。しかし、脳がどのように高次な機能を発現しているのかという原理はまだ知られていない。別の言い方をすれば、残念ながら今の脳科学は、まだ博物学的で、こんな事象もある。あんな現象もおこるというような知識を集めているような状況です

このように、脳については研究途上であることが多分にありながらも(もしくは、研究途上であるからこそ)多くの人の関心を引き寄せており、関心が集まる領域だからこそ脳に関することで自然の良さを検証する意義と可能性があると考えたとのことである。

・簡便性というアドバンテージ

脳の計測としては、MRI(核磁気共鳴)を利用して脳の活動に関連した血流動態反応を視覚化するfMRI、光トポグラフィにより脳の血流の変化を測定するNIRS、脳内に発生する磁場変化をとらえて脳の機能を解析するMEGなどがあるが、どれも高価かつ利用できる条件も制限される。その点、簡易脳波計は周波数帯(δ波、θ波、α波、β波、γ波)を見るだけで部位の特定はできないものの、比較的、安価であり、用途と条件を制限すればHR techにつながる価値を見出せることが考えられる。現にアメリカでは簡易脳波測定機がマインドフルネス瞑想のサポートツールとして実用化されているなどの事例もある。
また、周波数帯(δ波、θ波、α波、β波、γ波)という脳の状態と、それ以外の生体データや人事関連のデータと結びつけることにより、脳という観点から知的労働(頭脳労働)をする人の健康や生産性についての示唆が得られる可能性も秘めている。

どのような戦略をもって都市部の企業を惹きつけようとしているのか?

では、どのようにして都市部の企業で働く人、企業を呼び込もうとしているのか? ひとつには、今回、実証していく自然の近くで働くことの価値を訴え、価値観を共有する人や企業とつながっていくことを狙っている。
さらには、当地域内で自然の豊かさを感じられ、自然アクティビティへのアクセスもよいリモートワークセンターを設立し、自然体験の価値を研究し続けると同時に、価値観を共有する企業や働く人が当リモートワークセンターで働けるような環境整備を進め、新たな自然サービスや事業、地域創生のモデルを創出することを狙っている。

2016年10月に開始されたプロジェクト、現在(2017年8月)まさに実証実験が進んでいるところである。実証実験への協力や実験結果に関心があれば、ぜひ、ご連絡していただきたく存じています。

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